俳壇 「点滴」 (2005.09)
ほろ酔いの歩みともにす朧月
日脚伸ぶ使者を待ってる軒古巣
初孫の合格の声春来る
春の宵喜怒哀楽の浮世かな
淡雪や戸外に弾む子等の声
苗代のさざ波よぎる鳥の影
山深し裾野に笑みしつつじかな
夏の華百花煌き闇深む
雨乞いの稲妻遠し新田の荘
朝露の光りほんのり輝けり
ひぐらしやかすむ山並み近くせし
木立の葉震わせ渡る蝉時雨
風鈴やとぎれとぎれの夢うつつ
点滴の針先熱し夏の風邪
夏風邪や点滴ぽたりぽたりかな
過ぎ去りし戦禍を告げる敗戦日
恍惚の節目を語る終戦忌
                    
和久
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 俳壇 「空蝉」 (2005.09)
風体に似やわぬ小心青大将
飽食の日本列島夏痩せり
「海ゆかば」かばね屍沖縄忌
沖縄や広島長崎終戦忌
献体に承諾したり羽抜鶏
孫二人膝にのせたる生身魂
正体を見破られたか秋の蛇
空蝉の背中に風のふくばかり
子に遺す牛舎一棟草いきれ
祭笛腰に差したる半被の娘
立秋の波に崩れし砂の城
秋暑し寡黙となせり漬物石
妻と共クロスワードを解く夜長
早稲の穂を匂いたたせて刈られけいり
寒村の観光棚田稲稔る
酔芙蓉戒律きびしき修道院
かなかなのよわいのそこにしみとうる
中七の本音がちらり夜の秋
密やかな晩年の志実むらさき
あっけらかんと案山子一体残りけり
                    
興一
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 俳壇 「好敵手」 (2005.10)
初七日を菊の香りと共にすぐ
よき日だと信じ木犀香る朝
山に向き野猿を睨む案山子かな
芋育て農家を育て新田の土
白萩や黄泉へ旅立つ好敵手
白か黒か是非を問われし吾亦紅
定番の祖母のおにぎり運動会
孫というかぐや姫居り月祀る
阿吽のあとの寡黙や茗荷汁
また一人野辺に送りし茗荷汁
仮の世を紅もて果てし酔芙蓉
かなかなや行くほかなかり老いの道
法名の艶めく一字夜の秋
手をにぎるだけの見舞いや秋立てり
うっすらと老境みゆる霜夜かな
うつし世の刹那や今朝の霜の丈
                    
興一
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 俳壇 「干し大根」 (2005.12)
地図を追い果たせぬ旅路年の暮れ
日溜りの障子越しなる笑い声
朝の日や硝子に息吹くシクラメン
賑わいの中に掛け声酉の市
両脇が入賞の菊盛り立てり
白き肌櫓に舞いし干し大根
紅葉や池の鏡に色正す
宮参り晴着が競う七五三
夕映えに枯れ山水の絵巻なる
成し終えて何か忘れし年の暮れ
極月や思わぬ人の喪の葉書
冬桜思わぬ人より恋便り
年の暮れ松の手入れの匂い飛ぶ
北風にゆれる暖簾をくぐりたる
妻の折る師走を飾る童和紙
ひと時のうたた寝釣る瓶落しかな
                    
和久
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 俳壇 「冬紅葉」 (2005.12)
早々と赤城の風が尖りだす
赤城嶺の深き襞より冬の景
一年を思いめぐらす柚子湯かな
駄菓子屋の名残りの路地や柚子実る
銀漢や円周率は無限大
獅子舞の獅子も老いたり里祭
蓑虫の正論説いて独りなる
一回り牛を肥やして牧閉ざす
威嚇せしままの姿や枯蟷螂
生き方を変える一病花八手
小春日や一人たましひ干しにゆく
濯ぎもの満艦色となる小春
冬枯れに紛れてしまう齢なり
身の内を木枯一号吹き抜けし
寄せ鍋やとどのつまりは老後の計
青年の刀工鞴祭かな
茶も琴も遠き日のこと冬紅葉
炉話や鴨居に掛かる火縄銃
豪放にして繊細冬の岳
恋の句を詩箋に記す年始め
                    
興一
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 俳壇 「闘病記・・・骨拾う」 (2006.01)
小春日や眼が語る母の顔
風花のうつろに舞うや母病めば
揺り椅子の母ゆれており冬日和
冬晴れや介護の母の気の強し
ねんねこの母の筆談機嫌よし
母を看る時折り高し虎落笛
寝たきりの母の手白し冬苺
風通し母の臥所の畳替え
新しき介護ベットや春凍てる
立春や母の臥所に車椅子
予報図に春の兆しや母癒える
麗かや臥し寝の母へ窓開ける
猫柳一輪老人介護室
一棟の一室介護の春灯し
梅雨晴れや新車に替えし車椅子
鶴を折るリハビリ治療梅雨深む
向日葵の迷路の中へ車椅子
好奇心まだ盛りなり生身魂
生身魂歴史しずかに流しけり
主なき臥所の庭先赤のまま
母を看る不眠の妻や虫浄土
秋冷や臥し寝の母の背をさする
身に入むや延命器具を取り外す
寒菊や気丈の母の骨拾う
寒灯を消すや仏間に夜気せまる
                    
興一
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 俳壇 「福寿草」 (2006.04)
立ち話寒風走り止む会話
枯れ芝や餌をもとめ来し小鳥二羽
寒暁に身をちじませる齢かな
初日の出めでたし年の夜明けかな
味噌汁の湯気みなぎりし寒の入り
むくむくと土をともない福寿草
春冷の季節に惑う今朝の庭
絵札舞う掛け声高しかるた会
木漏れ日や香り漂う梅明り
節分会戸外の鬼が入りこむ
顔を出し世にめでられし初日の出
目が入り動き出したる初だるま
達磨市今年の景気八起きかな
春場所の国産力士盃を取る
蝙蝠の灯に舞いこみし春の宵
雲去りて上毛の峰山笑う
出勤の車のハンドル春凍てる
                   和久

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 俳壇 「春」 (2006.05)
昨日今日春を知らせる風の音
木の芽和え旬を楽しむコップ酒
夕暮れの夜桜めでに老夫婦
闇に散る花火のごとし花吹ぶき
列島の前線くるう寒気団
春雷や槌音高く屋根を葺く
立ち話なし会話とぎれし春一番
問診の看護師の瞳(め)春近し
春炬燵居間の隅にて眠りおり
花開き静かに沈む花器の水
長旅の春の使者待つ古巣かな
すずらんの花咲きそろい香り満つ
綱不在番付け競う夏土俵
                   和久

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 俳壇 「若竹」 (2006.08)
手荷物に傘も加えし梅雨の旅
若竹の日毎に空を低くせり
御巣鷹に遺族の顔の皺ふかし
あじさいの色競いあう古刹かな
轟音の宵闇の空百花咲く
蝶の舞いかすめて通る鳥の影
梅雨明けの空席めだつ傘置き場
原爆忌平和の誓い日々新た
線香のかほり帰路追う送り盆
                   和久

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 俳壇 「御霊舟」 (2006.08)
毛虫あまた焼いて焼酎に酔う
桑の実や一円五円の少年期
老鶯やいまも意中の人なりき
新緑に映えし石垣金山城
新緑や無名のつわもの金山城
ホテル出で日傘の人となりにけり
蟻の列西方浄土を目指しけり
日帰りの旅や心の黴払う
水打って母の周忌を納めけり
妖艶の香りを吐きし月下美人
色街の名残の格子戸花魁草
満開の沙羅の花且つしたたれり
灯を消して浄土へもどる御霊舟
うたかたの時の流れや御霊舟
想い出を乗せ精霊を流しけり
妻酔いて発光体となり蛍
山里の獅子も老いたり里祭り
そうなのか一緒に語ろう生ビール
夜は秋や卓に揃えし夫婦箸
                   興一

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 俳壇 「虫の声」 (2006.11)
台風の天災地災仲間入り
ドック入り結果待ちする秋の宵
巣を突かれ蜂乱舞せり庭手入れ
夜の更けて耳に残りし虫の声
虫の音の垣根を越えし庭の中
秋海棠女性のすがた装い咲く
雑草の根の深ぶかと伸びにけり
夕暮れの庭の清掃汗を拭く
赤とんぼ群れ飛びあそぶ朝の庭
芝刈りて草の軽ろさの香ほりたり
趣味の作自作自慢の秋飾る
十五夜の供え寂しき宵の雨
寝汗せり肌着をさがす霧の朝
稲妻や木立の雄姿写したる
松茸の産地不明の品定む
                   和久

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 俳壇 「行く年」 (2007.02)
夕映えの木立に柿の影二つ
菊花展一葉の折れし賞逃がす
清掃の箒目ありし散る落ち葉
行く年や見知らぬ顔の多くなり
紅葉の谷川沿いの川下る
熱燗やカルテの数値下がりけり
酒断ちて夜長の刻をもてあます
秋雨の傘の揺れおり路地の裏
里山の紅葉ひねもす照り映えり
冬晴れや赤城の峰を近くにす
落ち葉且つ散り色彩の豊かにす
切干のみぬまに細くなりにけり
着ぶくれの朝の運転点検す
友逝きし通夜の席の身にしみる
                   和久

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 2007年年次大会俳句コンテスト入選作品 (2007.04)
秀逸
   献 眼 の 奉 仕 煌 く 天 の 川
                     佐藤 和久L
   献 眼 の テ ン ト を 出 で し 風 薫 る
                     登坂 信一L
佳作
  老 人 の 施 設 慰 問 や 猫 柳
                     尾崎 文夫L
   ア ク テ ビ テ ィ 終 わ り て 集 う 木 下 闇
                     高野 憲樹L
   献 眼 を 決 め し 瞳 や 猫 柳
                     笠原 興一L

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 俳壇 「卒寿の祝い」 (2007.07)
行く秋や学び舎の窓遠くなり
東風強しテニスの球の定まらず
春一番店先の品影薄し
芝焼きの廻りに火消しの手桶置く
寒椿葉をとりのこし独り咲く
白菜の蓄え巻きする新聞紙
すずらんの芽吹き競うや雨上がり
掲載の妻のほほ笑みうららかし
樹樹深し鶯の声澄みわたる
白雲や青葉の影に吸いこまる
春浅し佳作入選身におもし
「2007年度年次大会俳句大会上位入選お礼句」

年あらた卒寿の祝い盃重し
期の移り肩の荷おりて夏盛る
  「一年間会長の任ご苦労さま」
                   和久

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 俳壇 「風の盆」 (2007.08)
日焼け止めぬって女を失わず
夏化粧決めて女を誇示したる
古文書に間引きの文字や蝉時雨
石となり水となりけり鮎を釣る
正眼に構えて外す西瓜割り
青春の脳裏をよぎる遠花火
背筋より悪寒走る夏の風邪
行き方は天意と定め端居かな
清流の音や献立鮎ずくし
神職は餓鬼大将なり祭酒
篝火に照る童顔の鵜匠かな
篝火の競いて灯る鵜飼かな
買い替えの厨に声だす冷蔵庫
町裏に藺笠の人や風の盆
夜は白む踊り疲れし風の盆
尾島宿貫くねぷた武者絵かな
気力では勝て齢の残暑かな
忽と秋天職一途鉄を打つ
諳んずる子の声透ほる夜の秋
夫に注す朝の茶柱秋立てり
何気なくそのひと言や茨の実
多感期の余白に軍歌秋高し
                 興一

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 俳壇 「冬至湯」 (2007.12)
赤とんぼ影を映して空に舞う
採血の結果待つ身や寒の入り
老いし身の齢すこやか冬至の湯
実ひとつ稔りのこして秋終わる
一芸に秀でし妻の干支ずくり
寄り合いの胸に目を引く赤い羽根
晩秋の人間ドック結果待つ
年金の残り少なし年の暮れ
年金の財布に暮れの風しみる
三ッ星や師走の港に光る星
                   和久
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 俳壇 「春隣」 (2008.03)
年毎に空席めだつ雛飾り
申告の汗の年金よにがえる
岩松の雪をかむりて背伸びかな
春一番雨戸の隙間気にかかる
庭白し木の芽啄ばむ小鳥たち
箱根路に健脚競い息白し
七草の粥を味わう顔と顔
孫かこみ年中行事の年始め
年新た薬の袋数の増ゆ
音もなく五感に響き雪積もる
味噌汁の朝餉香り春隣
啓蟄やめがね二つを使い分け
朝風呂の足裏(あうら)に冷やり旅の宿
                   和久


 俳壇 「紅襷」 (2008.09)
啓蟄の庭に小鳥の二羽三羽
雨後の日の格子に積る黄砂かな
植木市いずれも実りの貌をせり
一時の昼寝や夢の去りにけり
夏場所や王座の席も国際化
茄子苗の根本にほのと花抱く
白靴の万歩うながす傘寿かな
紅襷上州娘の盆踊り
夏の宵(よ)の舞台をはねる紅襷
早朝の葉影かすめて蝉の声
寝返りの夜の白けし熱帯夜
群れ鳩の避暑のとまり木呑竜寺
笛太鼓白雨に駆ける子供たち
更衣思い出詰まる古箪笥
蝉しぐれ古塀を越えて泣き惜しむ
冷戦の古き日のこと終戦忌
八十路坂上り下りし菊の花
ゆく夏の寂しさ感ずスタジアム
                   和久

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 俳壇 「夜の秋」 (2008.09)
骨董の夢二の額や紙魚走る
情念の隠れし春画紙魚走る
これいじょう晒せぬ身体猛暑かな
羅や親の血をひく怒り肩
でで虫の日がな孤独を楽しめり
又の名を駆け込み寺や半夏草
稲光上州太田を一撃す
敗戦の時空の彼方特攻機
征きしまま戻らぬ兄や敗戦忌
身の程の願いを亡夫(つま)に魂送る
涙腺のゆるむ齢や夜の秋
琴線にひびくものあり虫の夜
友独り黄泉に旅立つ風は秋
変革の世に遅れたり穴まどい
豊かさの果てや列島秋暑し
大喰いのテレビの娘豊の秋
一睡の昼寝にありし黄泉の国
青春の五輪に燃えし果てる夏
走り去る時を惜しむや法師蝉
花野には野暮な男がよく似合う
引くことも勝機の一手秋扇
                   興一

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 俳壇 「親子三代」 (2009.02)
お榊の水枯れにけり初七日
正月や健脚競う箱根の剱
孫の掌の大きくなりしお年玉
塀際の冬芽ふくらむ日差しかな
初雪のカーテン越しに耳をたて
年末のチラシ処理の一苦労
孫入社親子三代はばたきし
簾越し虫の鳴く声のせてきし
天高し飛行機雲の関ヶ原
冬木立透かし山並み近ずけり
一軒の老舗の消えし師走風
どこ知れず木の間に匂う金木犀
食卓の間引き菜香る夕餉かな
コスモスの笑顔ほころぶローカル線
白萩のほのかな香り風の道
赤提灯師走の足を迷わせし
秋空のドーム煌めく巨人星
不況風年あらためて吹きにけり
行く秋や村の太鼓の音はげし
                   和久

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 俳壇 「沖縄忌」 (2009.08)
沖縄忌ひめゆり学徒の礎清(す)む
ガマの奥鬼哭啾啾沖縄忌
子連鴨ゼブラゾーンを渡りきる
草むしる足が立たねば這ってでも
みずすまし青き惑星周りきる
押し車占領したる木下闇
身の丈に余る広さや三尺寝
紫蘇ジュース飲んで散歩の仕上げとす
百円の硬化一枚心太
炎昼の皆既日食影翳す
鰻飯囲み亡母(はは)の忌を修す
盆迎え鴨居の遺影の澄む瞳
さまざまな面影浮かぶ盂蘭盆会
焼きそばの匂いの誘う祭かな
緑陰の隅が居場所の喫煙者
滴りをボトルに満たし峰目指す
葛咲くや笑みて寡黙の六地蔵
同級会松茸ずくしの案内状
脳天に焼き杭打たる残暑かな
病棟のまさかの偶然夜の秋
                   興一

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 俳壇 「忘却」 (2010.01)
土寄せの手鍬にしみる芋嵐
新米の味と香りの便りかな
散策は八十路の日課返り花
金婚の春を迎えし夫婦船
空蒼し晴れ着の映える七五三
七五三未来の成人夢にみし
恵比寿講家内安全熊手買う
つれずれの浮世を語る案山子かな
晩秋の入り日に長し松の影
八十路秋友去る訃報の同級会
夢うつつ秋気のしみる麻酔台
点滴の落ちるしずけさ夜長かな
病院へ処方をもらう師走かな
忘却の五体をいやす柚子湯かな
冬至湯に浸りて余生の夢を追う
行きつけばなほ新たなる除夜の鐘
縄のれん熱燗チビリと暮れ惜しむ
八十路坂忍ぶ恋路の花歌留多
八十路超う夫婦善哉屠蘇を酌む
冬旱天の大王慈悲の雨
                   和久

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 俳壇 「終戦忌」 (2010.01)
土掻きの小指にふれし初茗荷
孫走るビリも楽しき運動会
そこはかと茶をすすりけり梅雨の朝
行く夏や三陸沖に浜の風
朝顔の垣根はみだし盛りなる
枕辺にさざ波ひびく春の宵
駅弁を妻と替えたる春の味
夏場所の名門部屋に土のつく
隅田川幾重に飾る揚げ花火
挨拶を添えてだされし団扇かな
八十路超えもろこしかじる健康歯
江戸の華神輿が息吹く髱(たぼ)の肌
逝きし友L字を語る送り盆
同級の集いの便り盆近し
軍靴の足音消えし終戦日
志願せし友の霊拝し夏終わる
さりげなく会釈を交わし夕涼み
涼み台外野指さす将棋戦
                   和久

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 俳壇 「青春期」 (2010.09)
ドンド焼き竹の爆裂炎吹く
揚げ雲雀あののもののと野良の声
碧空を我がもの顔のこひのぼり
城沼の内侍の夢や躑躅燃ゆ
翡翠の川面の疾風影走る
ラムネ飲む泡の向こうの青春期
ふるさとの便りを載せて新茗荷
相聞の仮名をしたため蛍舞う
夕立や女埴輪の丸い口
木漏れ日や遊女の墓の夏薊
町内の鎮まりかえる猛暑かな
下駄履きの打ち水してる翁かな
独り身の音もかすみし遠花火
日盛りの庭草取りを手ぬきせり
雨打つや朽ちし墓標の曼珠沙華
                   浩一

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 俳壇 「秋の蛇」 (2010.09)
現し世を駆け抜け蛇の穴に入る
穴まどい総身夕日に染まりけり
大局に深入りしたる秋の蛇
秋の蛇魂までは老いもせず
精神は生涯現役秋の蛇
禁煙の決断否か秋の蛇
日溜りを彷徨したる穴まどひ
コンビニの割引弁当穴まどひ
秋の蛇賞味期限を維持したる
哀愁の後ろ姿や穴惑い
青春の想い出はるか秋の蛇
穴惑い身の程知らぬ青春期
老ひてなほネオン恋しやあなまどひ
二次会はカラオケなりし穴まどい
穴惑い色即是空とはゆかぬ
斜に構へけじめをつけし秋の蛇
職を引き無位の身なりし秋の蛇
蛇穴に入るや伴侶に急かされし
艶やかな光沢蛇の穴に入る
穴まどひおおきなおせわでござひます
                   興一

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 俳壇 「古希の春」 (2011.02)
境涯を農に捧げし冬耕す
寒灯やいたわりあいし共白髪
冬の蜂精神までも老いはせず
ゴルファの肩口濡らす冬時雨
赤城嶺に雲湧きいでし冬時雨
駅伝の受け継ぐ襷汗凍てる
大利根の恵みに暮らしとろろ汁
年新た未知の余白に古希の文字
湯上りの皺の髭剃る去年今年
歳月の流れに乗りし去年今年
爺さんと言われまいぞよ古希の春
霜柱踏めば気骨の音たてり
親が子を送る通夜の菊凍てる
寝たきりの人ごとならじ寒見舞い
天神の風の下なり寒紅梅
下萌えや一句ひろいし散歩径
前向きに齢を重ね春立てり
デジタルに疎き齢や春炬燵
沈丁や磨けば光る古希の艶
控え目な熟女の恋やお茶の花
登校の子等の会釈や春隣
春隣庭に三ッの土竜塚
友来る地酒一本新走り
花八つ手亡母の笑顔がそこにあり
                   興一

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 俳壇 「頑張れにっぽん」 (2011.09)
新涼やオールジャパンの新組織
秋の陣連立競う関ヶ原
路地裏の打ち水匂う日暮れかな
神苑のかぼそき音色蝉の声
名と顔の合わぬ八十路の納涼会
朝刊の春もや晴らす虫めがね
復興の頑張れにっぽん夏の海
省エネを身体で示す昼寝かな
雨を乞う命のかぎり蝉しぐれ
原発の災害晴らせ千代の春
花開き妻の微笑み喜壽祝う
春宵の鳥の鳴き声夢枕
五七五脳の運動春うれう
災害や富士の霞みし駿河湾
三食も生きるみちなり冬籠
初願い四方の神に手を合わす
障子貼る終りて孫の掌が覗く
事にふれ妻の苦言や年明ける
冷房の部屋に居座る日課かな
朝開く百合のかほりや深呼吸
のど自慢卒寿の秋の特別賞
友去りし静かな庭の曼珠沙華
手酌酒ひと椅子ゆずる師走かな
                   和久

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 小幡ク吟行 (2012.04.22)
小幡路の堰のせせらぎ花は葉に
浩一
庭園の昔を忍ぶ春茶席
敏明
殿様と笑う山見し梅の茶屋

楽山園花びら舞いし鯉の群れ

信雄の春の雅や楽山園

花筏川面に浮かぶ雄川かな

花冷や悲話を伝えし宝積時
興一
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 太田中央ライオンズ俳句の会 新春句会 (会場 キヨカワ 2013.01.26)
賀状書く心の様を伝えおり
元旦の笑顔揃いし夢語る 信昭
シュプールを孫と競し七十路かな 敏明
今朝の春コトコトコトと小豆煮る
冠雪や稲田に並ぶ白観音 いさむ
初孫の笑顔に会えし年初め 眞志
城塞へ誘う緋寒桜かな
初釜や和装のお点前焚く香り 和久  
朝湯せり窓に飛び交う初雀 保夫  
熱燗や酔いし女の横座り 浩一  
上州の色は枯れ色風の色 興一  
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